ケイオスが都市を築いたら、どんな街並みになるだろう? これをはっきりさせるのはなかなかの難題だ。都市を築くというのはそれだけで難事業で、これはゲーム開発において骨が折れることのひとつだ。必要な作業はとても多いし期待はとても高い。ごく普通のファンタジー都市を作るだけでも歯軋りと不眠が起きる。アルトドルフを例に挙げようか。まず何より、アルトドルフは凄い都市だ! 我々は広場に絞首台を置き、魔術師の塔からは火を噴き出させ、宿屋はマスチフ犬のケツをテーマにした。どれもこれもが凄い、ウォーハンマー世界の素晴らしいものが、愛とたくさんのポリゴンから手作りされているんだ。
ケイオスの首都、"定めの都"はどうだろうか? 住民全体が禍つ神々を崇める都市とはどんな外見をしているだろう? 都市の機能はどんな具合なのか? なくした靴下はどこにいくんだ? どれもこれも難しい質問だが、都市づくりに取り組んだアーティストたちは、幸いにも「(モノポリーの)刑務所釈放カード」を手にすることができた。WARにおいて、我々はケイオス版シムシティを作っているわけじゃない(まあそれはそれで面白いゲームになるだろうけど)。"定めの都"は現実の都市を邪悪で、自己中心的で、権力欲に満ちた乱暴者や悪い魔法使いで一杯にして、それでどうなるかをシミュレートしたものじゃない。そのかわり、我々は奇怪でクールなアートを作り上げることに集中した。これこそが我々にとっての「釈放カード」だった。言い換えると、悪意に満ちた、堂々たる、圧倒的な都市を世に送り出すために我々は奮闘している。我々がそれを成し遂げれば、このロジックの背後にあるすべての馬鹿げた質問の大部分は意味を失う。我々は説得力のある都市を作ろうと必死になっているところだが、結局のところこれはファンタジーの都市であり、ケイオスの都とは、都市として考えうる範囲でもっともファンタジー的なものであるべきなのだ。
それじゃぁ我々がどうやって邪悪の都を作っているのかって? ここでは大体の流れを話そうと思う。はじめは、これほどの規模のものを作るためには、我々のスタジオにいるさまざまな分野から大勢の人間を集めねばならなかった。"定めの都"を作り上げることは、それ自体が小さなゲームを製作するようなものだ。この作業にはデザイナー、ストーリー・ライター、アーティスト、コンテンツ開発者、テスターが必要だ。それにどうやらマーケティングの人間も必要らしい。いま僕がこうして、"定めの都"がいかに素晴らしいかを説明する文章を書いているわけだからね。このゲームの都市はちょっとしたものだとは思わないかい?
都市はそれ自体が小さなゲーム・ワールドのようなもので、独自のゲームデザインに必要な素材を事前に用意しなければならない。必要な素材の一部は、MMOの機能上必要なものだ。宿屋、銀行、オークション・ハウスなどがこれにあたる。WAR特有のものもある。都市内に大規模なPvEコンテンツとか、RvR用の戦場を置くのだ。こんなふうにして、"定めの都"に必要なアート用のリクエスト一覧を作った。こんなかんじだ:
- 銀行
- 図書館
- 宿屋
- ランドマーク1
- ランドマーク2
- ランドマーク3
などなど。
これは楽しいけれども苦痛な作業だ。ケイオスの都にあるランドマークのアイデアを出すこと自体はとても簡単なことだ。"定めの都"には、不浄なエネルギーに包まれた巨大なケイオスの石柱があり、都市の上空にある種の暗黒神そのものであるかのように浮かんでいる。その他にも、"ザ・マウ"と呼ばれる、この都の崖の上に位置する巨大なコロシアムがある。ここでは残酷無惨なデスマッチが催され、貪欲なケイオスの大軍が歓声を上げる。こういったランドマークが都市の全域にわたって存在し、そのどれもが壮大で邪悪な風格を持っている。あっと、でもこれはまだ楽な部類なんだ。比較の問題だけどね。ケイオスの銀行はどうしよう? ケイオスの信徒たちは自分の金をティーンチ銀行に預けるのだろうか? 宿屋はどうだ? 騒々しく、野蛮で、間違いなく狂った一団……つまり、ケイオス信徒が近所のパブにたむろしているというのは、なんだか"へんな感じ"だ。"感じ"、これは重要な言葉だ。いかにもケイオスっていう感じにしなけりゃならない。建物を見て、「よーし、悪そうな感じだ」と思えるものにしないといけない。渦巻き、闇のエネルギーが荒れ狂う空を見れば、「うおっ。ここは魔力や歪みを感じる場所だな」と思うだろう。君がジーロットやチョーズン、マローダーを歩き回らせて、こここそまさに自分たちのための場所だと思うようでなければならない。このようにして僕は、"定めの都"のような場所にふさわしいようにハイレベルなアートを指示していったんだ。背景のビジュアルを、住人のイメージやキャラクターと釣り合わせる必要もある。核となるテーマを決定し、細部を決めるのはチーム全体の責任だ。例えば、コンテンツのために物語を書いたり、空が渦巻くエフェクトのためにコードを書いたりするんだ。空に浮かぶ邪悪なエネルギーによる巨大な亀裂や、ザ・マウの闘技場で放たれる壁に鎖で捕らえられているケイオス・ジャイアントは、こうした共同作業で産まれる。
都市創造の過程に戻ろう。デザインに必要な素材がすべて揃ったら、紙やペイント・プログラムを用いてマップを描きはじめることができる。これはまさしく都市を作る前準備にあたり、さまざまなチームの全員が満足するまで繰り返しマップを描くことになる。次のステップは大まかなコンセプトとポリゴンの灰色の四角でできた原型を組み合わせることだ。これができればランタイムをテストできるようになり、この都市がどう動くのかについて最初のフィードバックが得られる。ここでの目的は、コンセプトとモデリングの最終仕上げに移るまえに、基本的な建物の面積を求め、地勢を確定させることだ。アーティストたちが立派な外見の建物やランドマークをいくつも作り上げているあいだ、コンテンツ・チームはアートに生命を吹き込み、都市に声を与えるために物語と会話文を執筆する。都市の複雑さを考えれば、これはほんとうにとんでもない事業だ。僕にとってはビジュアルに多様性を持たせるという作業だね。
大規模な環境には、退屈させないために多様性が必要になる。それにプレイヤーの道しるべとして、ランドマークやビジュアル的に目立つ場所も必要だ。これはゲーム世界にも言えることだし、都市にも言えることだ。"定めの都"の場合、プレイ・スペースをさまざまなテーマに沿ったエリアに分割しつつ、全体としては統一した都市のイメージを作り上げる必要があった。ランドマークは、各テーマの中心点として機能する。ザ・マウは"定めの都"のなかでも荒っぽく、乱雑な区域の中心地で、マローダーや酔っ払いがコロシアムの周囲に大きなテントを張って野営している。これはアルトドルフのスラムに相当するものだ。魔導師の塔も、周辺地域を定義づける大きなランドマークだ。暗い尖塔がケイオスの奈落の上に浮かび、天空に脈打つケイオスのポータルに影を投じている。この都市の区画は、ほとんど崩壊してケイオスの虚無に飲み込まれんばかりになっている。あたかも渾沌の領域に近すぎるために都市そのものが食べられているかのようだ。最後に、我々は都市のRvRセクションに、ビジュアルの多様性をより与えるため、ほかのコーン神やスラーネッシュ神といった禍つ神々の稜堡が接する場所を設けた。
そうした多様性の中にも、いくつかの鍵となるビジュアル的要素を繰り返すことで一貫性は保たれている。ケイオスの建築物は基本的に重厚で強固だ。建物の多くは、大きく荒削りなブロックで作られている。この岩の基礎の上に、複雑な鉄細工がたくさん取り付けられている。一番単純な形だと、この作業は厚い金属の板やトゲをつけるだけだ。都市の塔の頂上の多くには、大鴉神(ティーンチ神)をかたどった手の込んだ彫像が、住人を見下ろすように置かれている。ケイオスの星や、浮かぶ眼球(我々はこれを"ウォッチャー"、監視者と呼んでいる)、ほかにも魔法の火、亀裂、そのほか不浄な魔力が"定めの都"を装飾している。"定めの都"はウォーハンマー史上もっとも壮大なケイオスの表現物であり、この文章を書いているあいだにも、さらなるケイオスの喜びを詰め込んでいるところだ。都市チームの包括的な目標は、"定めの都"に素晴らしい感じと、素晴らしい外見、そして素晴らしいプレイを用意することだ。"定めの都"(まだ詳細は話せないけど、地下に隠れて広がるクールなダンジョン)の驚異について考えると、おなかの辺りに暖かいものを感じる。この偉大な都市がわずか数ヵ月後には世界中のみんなと共有できるのだから。